横行するSESのサービス残業。エンジニアの対処方法は?

糞プロジェクトに投入されて、毎日こんなに残業しているのに給料ってこれだけ?

そんな、絶望的な気分を味わった人も多いのではないでしょうか。

実は私もSESで客先常駐をしている時代は給料が本当に寂しいものでした。沢山残業をしているはずなのに給料が思ったより少なかったのです。

それは正にサービス残業のせいでした。

実際、世の中のシステムエンジニアはそれほど残業が多くありません。「平成30年賃金構造基本統計調査」ではシステム・エンジニアの残業時間は月16時間に過ぎません。

しかし、事業会社におけるIT部門のSEならまだしも、SESの会社で月16時間残業というのは経験上ほぼあり得ません。仮にこの数字が会社から提出されたものであれば、むしろ、見えないところでサービス残業が相当あるのではないかと思うのです。

この記事では、どんな状態がサービス残業と言えるのか、会社はどんな方法で社員にサービス残業をさせるのか、そしてその対処法についてご紹介したいと思います。

残業とサービス残業の基礎知識

労働基準法で定められた法定労働時間、会社が定めた所定労働時間、これらを超えて働くことが残業です。

本来労働基準法が定める法定労働時間は、1日8時間、週40時間です。

それに対して就業規則や雇用契約定められるものが所定労働時間ですが、所定労働時間を超えれば、法定時間内であっても、残業は発生します

法定労働時間は、本来この範囲内でしか社員を働かせてはならないというものです。

ですから、所定労働時間>法定労働時間は許されません。これに違反すると懲役6か月以下または30万円以下の罰金が科せられます。ただし懲役については極めて悪質なケースに限られます。

えっ、実際に残業しているぞ!と疑問に思う方もいると思います。

それは、会社が社員と「時間外労働・休日労働に関する協定書」を結び、「36協定届」を労働基準監督署に提出しているからです。こうすると法定労働時間を超える労働、つまり残業をさせることができるようになります

これが、残業が発生する基本的なメカニズムです。

そして残業時間の対価が支払われない状況をサービス残業と言います。つまりタダ働きです。

ではどのような方法で会社は従業員にサービス残業を強いるのでしょうか。

サービス残業が常態化している企業でよく見られるケースをいくつかご紹介します。

私

ちなみに、労使間でしっかりと協議しないで名ばかりの三六協定を締結したり、最悪の場合は三六協定を結ばないで残業させているケースもあります。後者は完全に労働基準法違反ですけどね。

サービス残業が発生するケース

①残業時間を少なく申告する

SES契約では、労働時間、残業時間について明記されており、本来はこの時間内で働けば済むことになります。契約にない残業を要請されたら本来は断ることができます。

しかし、炎上プロジェクトで多くの人が残業している中、僕らだけは残業しませんなんて言えるでしょうか?常駐先のメンバーとも徐々に人間関係ができてくるところで、契約を振りかざして時間通りに帰るなんてことは人として難しいものです。

更に、だからといって、残業時間を素直に自社に申告できるかというとそれも難しいのが事実でしょう。自社の上司に怒られるということもありますし(どうみてもパワハラですが)、お客さんに迷惑をかけたくないという気持ちも働きます。知らず知らずのうちにお客さんと会社の間の板挟みになる訳です。

結果、残業を過少申告する、サービス残業がめでたく完成です。

上記ならまだしも、最悪なのはプロジェクトリーダーが自分の評価を上げるため、効率的に仕事してます!的に残業を過少申告することです。こういうリーダーの下では、メンバーが無言の圧力を受け、追随することになります。

結果、こちらもサービス残業がめでたく完成します。

結局、客先常駐するが故に、会社の管理が及ばなくなり、こういった誰得か分からないサービス残業が発生するのです。正にSESの弊害と言えるでしょう。

私

私も経験がありますが、こういうリーダーは本当にいるんですよ。しかもその人は大体炎上プロジェクトに入るんですよね。それでどうなったかというと、このリーダーの下に入った社員は全て辞めていましたね。冗談ではなく本当のことです。

②仕事の持ち帰り

SESで広く行われているのが仕事の持ち帰りです。

最近では情報漏洩を防ぐという観点からプロジェクトルームからのPC・データの持ち出し禁止としていることが多くなっています。しかし、客側がメンバー分PCを揃えるというのは非現実的ですので、作業者がPCを持ち込むということは割と普通に行われています。結果的に、帰宅する際はPCを持ち帰ることになります。

業務時間内で終わらない仕事を持ち帰り自宅で仕事をした場合、それはもちろん残業に値します。土日に家で作業をしても、対価ををもらえていなければ、それはサービス残業です。

しかし自分の判断で仕事を持ち帰った場合はグレーゾーンと言われています。持ち帰らざるを得ない状況だったのか、緊急性などによって判断されますが、サービス残業と認められない場合もあります。

とはいえ糞プロジェクトでは納期のプレッシャーが激しいですから、どうみても持ち帰らざるを得ない状況といえるでしょう。

上司が部下に対して指示した仕事が、客観的に業務時間内で終わらないと判断されると「黙示の業務命令」とみなされますが、会社の命令で糞プロジェクトに入っている以上、SESという仕事の形態でも、サービス残業とみなされると考えられます。

私

電車でカバンを盗まれたり、データを入れていたUSBメモリを落としたりするともう最悪!

③始業時間前の仕事

残業=就業時間後と捉えがちですが、定められた就業時間外であれば時間外労働=残業と認められます。つまり就業時間前に仕事をするのも残業と言えます。

炎上プロジェクトでは終電に間に合わなくなり、座席をベット代わりにしてプロジェクトルームで寝ることも珍しくはありませんから、朝の朝始業時間前に仕事をすることもあり得ます。そしてこれは、残業代支給の対象となります。

この仕事に対する残業代をもらっていないのならば、それはサービス残業と言えます。

私

その昔、出勤したら机の下に人が寝ていたということがあったよw死んでいるのかと思ったねw

④みなし残業でひとくくり

みなし残業は、一か月にするであろう残業を固定時間で計算し、毎月固定の残業代を給与と一緒に支払います。

もしそのみなし時間を上回る時間の残業をした場合は、当然その分の残業代が追加されなければなりません。

ですから、本来は残業しなくても基本給+固定残業代が貰えるという大変嬉しい仕組みなのです。

しかし、何故か固定残業時間を超える時間については残業代を支払わないという方向で運用されるのです。私がいたSESの会社でもこれを導入していたのですが、社員がしっかりと理解できないことで、自ら残業代を過少申告するようになっていました。

しかしそれはサービス残業です。

私

ブラック企業がよくやるやつですね。

⑤「名ばかり管理職」

「名ばかり管理職」はIT系にありがちなサービス残業の悪質な手口の一つです。

どのような仕組みかというと、通常であれば社内の基準では管理職とは言えない職位を管理職として扱い、サービス残業を強いるのです。

労働基準法では管理職は業務の管理監督者となり、経営者と一体的な立場とみなされるため、残業代は支払わなくても良いとされていることが悪用されているのです。

あるSIerでは、2年目以降のエンジニアは全員管理職扱いにされていました。

「名ばかり管理職」の例を挙げると、マク〇ナルドの店長が管理職に当たるか否かで、裁判になったこともありました。結果的には店長側の主張が通り、管理職ではなく、未払い残業代も支払われています。

この問題は、経営と一体であるか否かが大きなポイントとなります。

通常、プログラマー、システムエンジニアは上司の指揮命令のもとで仕事をするものですし、SES契約の場合は、自分がプロジェクトリーダーであったとしても経営者と一体というのは無理があるでしょう。

ですから、殆どの方は管理職に当たりませんし、残業代も支払われるべきなのです。

サービス残業はどう対処すべきか

サービス残業に対しては、自身で「NO」と言えることが理想的ですが、実際の所サービス残業を従業員に強いるような企業の場合、威圧的な態度で抑え込まれてしまうことがほとんどです。

クビにする、給与を下げるなど、様々な脅しともとれるような発言をされこともありますが、それ自体も本来は違法です。

ではサービス残業に対処する適切な方法はあるのでしょうか。

自分の体と精神を守りましょう

これは言うまでもありませんが、身体・精神的にも影響を及ぼしかねないと危機感を抱く場合は、就業環境を自ら変えるという手段も検討すべきです。

未払いの残業代については、2年以内であれば請求が可能です。

会社に在籍したままこの交渉を行うと会社との関係性が悪化し、その後の業務に支障を来すリスクが大きいため、実際にこの手段で残業代を請求するのは退職後の人がほとんどです。

転職や退職を検討する場合は、交渉の材料としてサービス残業の証拠が必要となりますので、タイムカードや給与明細、勤務時間を記録したものなどを集めておきましょう。

労働組合に協力を要請する

サービス残業が常態化してしまっている企業は、同じ状況に開かれている社員が多くいるはずです。

そういった状況下において力を発揮するのが労働組合です。

労働組合は会社との交渉のために存在し、会社と労働者が対等な話し合いをするために存在します。

憲法上でもその「団体交渉権」は保障されているため、会社は正当な理由なしに労働組合からの要求を拒否することはできません。

労働組合にサービス残業の相談をする前に、自分自身が労働組合に入っているかを確認しておきましょう。

労働組合がその残業の実態を「問題あり」と判断すれば、その後の交渉は労働組委が主導で行ってくれます。

・・というのが、理想なのですが、労働組合がほぼ機能していない会社も多いです。小規模な会社の場合、労働組合がない場合もあります(法律上で許されている)。結果として、会社の行為が黙認されることになります。

私

結局、誰かに助けてもらおうとするのは無理かもということだよね。こんな会社からは、さっさとおさらばするのが吉かもしれないね。

労働基準監督署に報告

労働基準監督署とは、会社を労働基準法に則り監督・指導する行政機関です。

ここにサービス残業についての報告を上げれば、会社に対して改善の指導をしてもらうことができます。利点は匿名で対応してくれるという点です。

一方で社外の行政機関に動いてもらうことになるため、きちんとした証拠を準備しておく必要があります。残業時間がわかるもの、給与明細など残業代が未払いであることがわかるものを用意しましょう。

・・・ということで済めばいいのですが、実際はこのように上手く解決することはないでしょう。

なぜならば、サービス残業を強いるような会社の場合、基本的には確信犯だからです。裏には、ブラック士業と呼ばれる悪質な社労士や弁護士が助言していることもあります。労基署対策はバッチリな訳です。

また、労働基準監督署は会社を「送検」する力を持ちますが、絶対的に職員が足りていないため、送検までいかないことが殆どです。あまり、期待はしない方が良いです。

とはいえ、「助言・指導」、「あっせん」という仕組みはそれなりに使えます。これは、労働基準監督署が仲介することで、皆さんと会社で話し合いをして下さいという仕組みですので、匿名では使えませんが、会社側を交渉のテーブルにつかせることは一応可能です。しかし、会社に無視されることもまたありますので万能ではありません。

私

ここまでくると裁判という最後の選択肢がちらついてくるよね。ただ、裁判をすると判決まで結構時間がかかるみたい。個人的には良い会社に転職するほうがいいと思います。

そもそもSES会社にいてはいけない

このサイトで何度も書かれていますが、SES・客先常駐は様々な問題点があります。特に、労務管理の点については、この記事で指摘したように、野放しの状態になりがちです。そして、本来守ってくれるべき会社が敵になることもしばしばです。

SES会社は、管理責任を放棄するだけでなく、皆さんが過労で苦しむ中、利益だけを吸い続けます。私がいたSES会社の上司は、部下が炎上プロジェクトで苦しむ中、毎日飲み歩き、美食を重ねて肥え太り、更には配当もがっぽり貰っていました。こんな会社に居続けたいと思いますか?

この例は極端ですが、多くのSES会社はおかしなことになっています。SES会社からは今すぐ脱出して下さい。

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