中小IT企業はやめておけ?転職先としてのメリット・デメリットとは?

様々な技術が日々進歩する現代、IT業界の企業数も年々増えています。

とはいっても、業界を代表する名の通った大企業は一握り。後は規模の小さめの中小企業が多くを占めているのが実情です。

転職業界では、ITの中小企業はヤバい、いわゆるブラックだという話はよく耳にしますが、実際の所はどうなのでしょうか。

ここでは、中小IT企業への転職は良くないと言われる背景と実情をご紹介します。

IT業界のブラック企業ってどんな企業?

よく聞く「ブラック企業」という言葉ですが、どのような体質の企業の事を指すのかはご存知でしょうか。

厚生労働省が一般的な特徴としているのは下記の3つです。

  • 極端な長時間労働やノルマを課す
  • 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
  • 労働者に対し過度の選別を行う

つまり、長時間労働、重労働、それに見合わない給与と就業環境、退職率が高いといったことが特徴と認識できます。

さらにIT業界の場合はこんな特徴がある企業もブラック企業と呼ばれます。

  • 蓋を開けてみたら客先常駐(SES、派遣型SE
  • 任される仕事は単調作業のみ

特にSESと呼ばれる業態は、「人売り」「人出し」という言葉で呼ばれることもあり、あまりいいものではないということは想像がつくかと思います。

本来SESはエンジニアの能力自体を契約の対象とします。よって、すべてのSES企業が悪質というわけではありません。

しかし、規模の小さい会社ではどれだけ人を出せるかということに重きが置かれているケースもあり、エンジニアの能力を無視した形で勝手な派遣先を決められてしまうという事態が起きます

個人の希望や将来性を顧みず、さらに薄給で勤務させるという劣悪な環境は、まさにブラック企業と言えるでしょう。

中小のIT企業がブラックと言われる理由

では、なぜIT業界の中でも特に中小企業はブラック企業が多いと言われるのでしょうか。

一つは業界の特殊な構造に大きな原因があります。

IT業界は仕事の下請けがとても多い業界です。

まずは発注元の大手企業が「一次下請け」へ、そしてそれを「二次下請け」へ、そしてさらにというように、下請け業者が増えていく仕組みとなっています。

さらに下請けの下部になればなるほど、その利益も少なくなります。つまり少ない予算で開発をしなければならないという過酷な環境となるのです

その下請けのうち、二次下請け以降を請け負うのが主に中小企業となります。

少ない予算で下請けの仕事をする中小企業。社員はどのような環境に置かれるでしょう。

  • 低賃金
  • 長時間残業
  • 休日出勤
  • 退職者多数で慢性的な人手不足

まさにブラック企業の条件を満たしてしまう状況となるのです。

また、先に述べたSESの業態の企業も中小企業がほとんどです。

これらの理由から、中小のIT企業はブラックだから就業先としては懸念が大きいと認識されるようになってしまったと考えられます。

 

中小企業だからブラックというわけではない

ここまで読んでいただくと、IT中小企業はブラック企業しかないのでは?と誤解を招くかもしれません。

しかし、IT業界のブラック企業は大手や人気企業にも多数存在します。大手企業の子会社などでは意外と怪しいものが多いのも事実です。

つまり、中小だからブラック企業というわけではなく、それぞれの会社の経営方針、ポリシーの持ち方で大きな差が出ているということです。

ただの下請けだけではなく、自社サービスの開発をしている意欲的な中小企業も数多くあります

自社の社員を大切にし、離職率が低い環境を整えている中小企業もあります

エンジニア=長時間労働、突発的な休日出勤と捉えられがちですが、繁忙期以外は定時で帰れるという中小企業も多数存在します

要するに、しっかりと情報収集をすればブラックではない中小企業とブラックな中小企業は見抜けるということです。

様々な新しいサービスが生まれる裏には、多くの中小企業の支えがあります。

いろんな事情はあれども、企業の規模=会社の良し悪しということではないということは明言できます。

すべての中小IT企業はブラック企業だという概念は捨てて、会社単体としてフラットな目線で見てみることをおすすめします。

中小IT企業は本当にヤバいのか?中小IT会社でSEをやっていた人に聞いてみた

私
柏木さん(仮名)(40代男性)は、50人位のIT企業で10年ほど勤められたとのことですが、どのような仕事をされていたのですか?

プログラマ、SEですね。SESが主でした。総合電機系のSIerの仕事が多かったですね。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)

私
残業時間はどの位だったのですか?

月40時間~80時間位だったと思います。これはプロジェクトによって様々で、殆どノー残業の時もありましたし、毎日終電・休日出勤アリ・過労死ライン越えということもありました。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
楽しかった思い出は?

客に怒鳴られたりとか嫌な思い出しかないなあ(苦笑)だって、バグがゼロなのが当たり前の世界で、褒められるもクソもない。IT部門の人ってSIerに滅茶苦茶厳しいんですよ。それが、当然のごとく下請けの業者に降ってくるんです。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
では、苦しかった思い出は?

沢山あり過ぎて時間がいくらあっても足りないので止めておきましょう(苦笑)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
SESとか客先常駐の話になりそうなので、中小IT企業特有の良い点悪い点を教えて下さい。

そうですね。まあ、何人かでチームを組んで炎上プロジェクトに投入されていく訳ですから、勢い連帯感と言うか、濃い人間関係が築けますね。一緒に戦場を駆け抜けたみたいな(笑)あと、人数が少ないし、部署の数もないので、体制はほぼ固定。ですから、なおさら人間関係は濃くなりますね。結構、キャンプに行ったり、野球をしたりもしましたよ。

中小企業だからといって昇進しやすいということはないと思いますね。評価としては、客からの継続発注という業績評価のウェイトが大きかったですね。本来SEは能力評価であるべきだと思いますが、実態は「幾らで売れたか」という評価にすり替わっていたような気がします。

中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
悪い点としては、客先常駐、SESが当たり前ということでしょうね。

それと常駐先の大会社と比較すると研修制度が全くありませんでしたね。会計とかの知識を身に着けたいと思っても、機会がないし、時間もなかった。確か、資格手当も情報系の資格ばっかりだったような気がします。そもそも、資格を軽視している人が多かったですね。目の前の仕事を頑張ればいいんだ…みたいな。でも、将来のキャリアを考えると、若いうちに資格は取っておいた方がいいですよ。

あと辞めた後も名刺交換した人に企業名を言うと「は?」って顔をされてバカにされるのが辛いですね。大企業の名前が使えるのとそうでないのでははっきり言って大違いです。

中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
給料の面ではどうですか?

そりゃ、SESをやっている会社の給料は高くはないですよ。ボーナスも最大で1ヵ月分しか出なかったし。それでも、退職した時には数百万円位の貯金はありましたね。

残業代が多かったのと、使う暇がなかったからですが(笑)

中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
結構コンプライアンスの面で緩いという話を聞くのですが。

セクハラ関係は多かったですね。実際にセクハラはなかったようなのですが、女性社員が大げさに騒いで結局、男性社員が退職ということがありました。怪文章が撒かれていたこともありましたね。これも特定の女性社員の仕業だったようです。それと、未払い残業代は結構あったと思いますよ。あと、3.11後には雇用調整助成金の不正受給は普通にありましたね。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
えっ?どういうことですか?
あれは、雇用を維持するために国が助成をしますという制度なんですが、出勤扱いにして内部/外部の講師を使って教育訓練するとお金がプラスされるんですよ。教育なんてしないで 仕事させると給料が賄える訳です。実際はここぞとばかりに、糞みたいなパッケージソフトを作らせてましたね(苦笑)ちなみに、国の抜き打ち検査で、全額返納という会社もあったそうです。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)
私
そうですか・・・。これからIT業界の中小企業への転職を検討している方にアドバイスをお願いします。
中小企業に入るなら、特殊な技術とか、パッケージ、ソリューションを持っている会社が良いと思います。悪質なSES会社の場合はいかにもパッケージを持っているように見せかけているところもありますので、面接で常駐はありますか?と聞いてしまいましょう。それで落とされるような会社なら最初から行かない方が良いのです。あと、ゲーム系の会社は、結構浮き沈みがある印象です。面白みがイメージできないかも知れませんが、業務系の方がいいと思います。
中小企業出身の柏木さん(仮名)
中小企業出身の柏木さん(仮名)

 

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